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生産性とは、ムダを楽しむためにある?

「働き方を変えて、生産性をあげよう。そして・・・」

日本の労働生産性は、世界の先進7か国(OECD加盟国)において、1992年より25年間連続で最下位を記録している(OECD2016年調査)。

だから、日本は生産性を上げるべきだ。

いまやこの論理展開は、政府の働き方改革や、企業での経営戦略、人事制度、雇用形態、オフィス環境の改革・・・あらゆる切り口で用いられる。AI/テクノロジーの時代が訪れ、これまでは測ることのできなかった抽象的な事柄にも「数字」「データ」が現れ、いよいよ、最も人的な洞察やインタラクションが鍵とされていた企業のHR分野においても、判断材料としてデータが活発に用いられるようになった。

生産性のデータに戻るが、この数字を目にして、さあ改善だ改革だ・・・と動き出す前に、ほんの少し考えてみたいのだ。

・果たして、このデータはいったい何を表しているのだろうか?

・或いは、仮に日本の労働生産性の数字が5年後急激に上昇したとして、そのときの私たちの働き方というのはどのようなものだろうか?

・その生産性は、私たちの生活の何を満たそうとしているのだろうか?

「働き方を考えるカンファレンス2017」

(カンファレンス最中にグラフィックカタリストチームにより描かれたグラフィックメモ)

今週2月15日、虎ノ門ヒルズにて「働き方を考えるカンファレンス2017」が行われ、参加してきた。主催は、働き方を選択できる時代を目指す一般社団法人AtWillWorkだ。もちろん、生産性についてだけではなく、マネージメント、人材育成、健康、労働時間、働く環境、テクノロジーなど、様々な切り口から未来の個人の働き方、そのための企業の在り方について議論された。

具体的には、去年話題となったロート製薬の「副業解禁」、Sansan株式会社の「神山ラボ」で知られる田舎の古民家を使ったサテライトオフィス、子育てをしながら思い切り仕事をすることを両立する株式会社HARES創設者 西村さんの選択などを事例に、取り組みの中心者が実際に話された。午後のブレークセッションに入り、『働く時間と生産性』のセッションが始まって間もなく、登壇者から一つ重要な問いがあがった。

「生産性って、なんでしょう?」

そのあとに生まれた議論がカンファレンスの中でも特に示唆に富んでいた。「そもそも、無駄なことや遊び心をもってする仕事の方を大切に感じている」と、モデレーターであり株式会社ウィズグループ代表の奥田さんがぽろっといった。それに対し、企業の内外において、新規事業などすぐには売上に繋がらないが可能性のある新しいことに挑戦している登壇者が、ほぼ全員同意した。

取り組んでいる新規事業やプロダクトが話題を呼ぶまでは、既存の事業で日々売上に貢献する社内外の仲間から白い目で見られることもある、こうした苦労話も明かされた。

ムダを楽しむために、生産性をあげるという選択肢

(ブレイクアウトセッション「働く時間と生産性」グラフィックメモ)

最初に挙げた、OECD労働生産性調査の数字に戻りたいと思う。この数字を何とか改善しようと、最新のテクノロジーを使い、最新の制度改革事例にならって生産性向上を図ったとき、果たして数字は変わるだろうか?会社は、パフォーマンスを存分に発揮している社員たちの活気で溢れているだろうか?

今回のカンファレンスで示唆された答えは、NOだ。そう簡単にいくとは思わない。なぜなら、最終的に生産性を上げるのは制度でなく人であり、人が、同じ時間の中で一生懸命に生産性を挙げようと頑張るのは、それによって何か「やりたいこと」があるからだ。それは人それぞれに違うだろう。

早く仕事を完成させて、家で待つ子供を一刻も早くこの手で抱き上げたいから。

読書やセミナーで学びを得たり、新しい人脈を増やしに外へ出向きたいから。

成功確率は低くても、面白そうなビジネスをプロトタイプしてみたいから。

今日も家で美味しいご飯を作って、家族と丁寧に時間を過ごしたいから。

もしかしたらこれらのことは、従来、企業としては「むだ」「遊び」と思われていたことかもしれない。上司に遠慮して、言えなかった、できなかったことかもしれない。しかし、既に到来している「個の時代」に向けて働き方を見直していくということは、こうした一人ひとり異なるモチベーション、価値観を大切にしながらも、会社として個人として十分に生きられる(食べていける)ための準備をするということではないだろうか。

カンファレンスに参加した私たちが向き合うべき問い

(最後のセッションの様子)

生産性を上げるために生産性を上げる取り組みを施行するのではなく、自社における生産性とは何か、社員ひとりひとりはどう考えているのか、何をするために生産性を上げたいのだろうか。こうした問いから見えてきた、ひとりひとりの/あるいは自分自身の声に従って、適切な制度やツールを、カンファレンスのスピーカーたちが示す事例を参考にしながら決めていくということが大事である、そんなことを考えさせられた。

ムダなことをする時間が欲しいから、仕事の生産性をあげたい!

一見矛盾しているようにみえるが、企業がこうした個人の声を快く迎え、応えられるかどうかが、最終的には、OECD調査におけるグラフが今後上に上がるかどうかの分岐点になるのではないだろうか・・・。

※写真:AtWillWorkグラフィックデザイナーによる議事録を写させて頂ました(アップロード了承済)。

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