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業務の見直しは「なくせないか」から始める順番が大事。デジタル化とECRSの話。

他社もすなるDX化といふものを、わが社もしてみむとてするなり。

そんな号令がトップから降りてきて、バックオフィス部門もとりあえずシステムを流行りのクラウドサービスに変えてみる。ITコンサルタントの勧める通りRPAを導入してみる。いやいや時代はAI活用だ。結果、便利になったのかどうなのか分からないけれど、なんとなくDX化されたような気がするものの全く減っていない業務と考え方。システム料だけが増える。そんなバックオフィス業務の現場をよく目の当たりにします。

今回は、ツールを検討する前に知っておきたい「ECRS」(イー・シー・アール・エス、またはイクルス)という業務改善の考え方のお話をします。日々の業務においてこの視点を持っておいてもらえれば、こんな不幸なことにはならないはずなのに、という視点。昔からあるお話なので知っている人は読み飛ばしてもらえればと思いますし、「イカ?ピクルス?どっちにしてもお酒に合いそう。」と思った方はお酒を飲みながら是非読んでみてください。

ECRSは「なくせないか」から始まる順番が何より大事

ECRSは、(1)Eliminate(排除:業務をなくせないか)、(2)Combine(統合:一緒にできないか)、(3)Rearrange(順序入れ替え:やり方を変えられないか)、(4)Simplify(簡素化:簡単にできないか)の頭文字から取ったもの。

「なくせないか」はそもそも不要になっている業務をやめること。「一緒にできないか」はバラバラになっているデータを一つにまとめてそこから必要なデータを取り出すというようなこと。「やり方を変えられないか」は作業順序を変えることで時間短縮を図ることなど。また「簡単にできないか」は複雑な手順になっている状況を整理すること。

そんなこと当たり前じゃないか。そう、業務改善をしようと思うなら必ず思いつく当たり前すぎる視点なのです。でも、多くの現場ではそれがうまく機能していません。

なぜなら、ECRSはその内容よりも「順番こそが何よりも大事」だからです。

信じられないかもしれませんが、ECRSの順番を徹底して意識するだけで、業務改善の内容や業務の効率化の結果は全く異なってきます。それくらい「なくせないか」という視点を担当者が持ちにくいということでもあります。

「前任者から引き継いだものなので。」 「マニュアルに書いてあったので。」

時代が変わり、社会のルールも変われば不要になっている業務というものは必ずあります。たまたま前任者がつくった謎ルールを疑問を持たずずっと継承していることも。

そんな業務を「とりあえずクラウド化」する視点から始めると、そもそも要らなくなっている業務をお金や時間をかけて効率化してしまうことになります。

そんな馬鹿な。と思うかもしれませんが、業務改善の現場では本当に多い事例です。「イクルス、イクルス、イクルス、、、、」と毎日唱えながら業務に取り組むだけでもバックオフィス業務の効率化の成果は全く違ってくる。私は本当にそう思っています。

今の業務を50%の時間でするにはどうしたらいいですか?

大事なことなので何度でも言いますが、ECRSは順番こそが大事。その中でも「E=Eliminate:なくせないか」から考える始めることが最大のポイントです。

「そんなに簡単になくせる業務なんてないですよ」という方に、もう少しイメージしやすくするためにお伝えしているのが「今やっている業務を次は50%の時間でやるにはどうしたらいいですか?」ということ。

今やっている業務を次は90%の時間、80%の時間でやることは、経験を積んで作業スピードが上がれば可能かもしれません。

しかし、50%となると業務の流れや仕組みを変えなければ普通は実現できません。「いや、そんなこと無理!」というのが業務改善のスタートになります。それでも成し遂げようとすると、そもそもの業務の目的に立ち返って必要なものや重要なものを意識して取捨選択するようになります。「なくせないか」という視点だけでは思いつかなくても「今の50%の時間でやるには?」という問いが業務改善のヒントになりことも。

ちなみに私は税理士試験でこれをヒントに解き方を変えてから合格するようになりました。どんなに速く正確に問題を解こうとしても人間には限界があります。「今の50%の時間で今と同じ点数をとるにはどうしたらいいか」という視点で、まず全体像を眺めながら着手すべき問題の見極めを繰り返すことで手をつける順番という仕組みを変えたことがポイントだったと感じています。

目の前の当たり前から少し距離をおいて考えてみること。それが改善効果を高めるために必要な考え方になります。

DX化の基本は手法のデジタル化と合わせて従来の組織やビジネスモデルをアップデートすること

他社もすなるDX化といふものを、わが社もしてみむとてするなり。

冒頭の号令をかけるトップ自身が、考え方もマネジメントの方法も変えずにDX化を唱える。補助金がある、税額控除がある、流行っている、金融機関やコンサルタントが進めるから。まさしくそんな形でDX化とやらに取り組んでいる企業が多いように見受けられます。

何も進まないよりも今の流れは歓迎すべきですが、この変革のタイミングで生産性の上がらないシステム化が蔓延してしまうことを懸念しています。DX化の目的は業務のデジタル化に合わせた組織やビジネスモデルのアップデート。そのため働く人の考え方や視点の変革も重要になってきます。

今回はDX化よりも何よりもまず、日々の業務から改善のヒントを探るためのECRSのお話でした。ちょっとした意識で効率化の成果は全く変わってくるので、まずは「なくせないか」から始める意識を持ってみてください。

税理士・中小企業診断士 S0U-MU PROJECT代表  田中 慎

経営者の良きパートナーになりたいと、税理士資格、 中小企業診断士資格を取得。2019年より 総務やバックオフィスで働 く人達のためのSOU-MUプロジェクトを開始。 「SOU-MU NIGHT」など、 起業家とバックオフィスで働く人達が地域で繋がり、支え合う環境づくりを目指している。

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