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高齢者の雇用に関するルール、継続雇用制度や高齢者の特例(第二種認定)等を社会保険労務士が解説!

深刻な人手不足が続き、採用市場は優秀人材の奪いあいとなっています。物価高に見合う賃金水準の引き上げが話題になり、各社様、人件費コストに頭を悩ませているものと考えます。このような採用難の環境において、「高齢者雇用」についても安定的な人材確保のための選択肢の一つとして注目いただきたいと考えます。


令和5年4月からは段階的な公務員の定年引上げが始まります。民間企業が追随を検討することも予想され、今後ますます高齢者雇用に関心が集まると考えられます。今回は、企業に課される高齢者の雇用確保措置とその注意点を社会保険労務士が解説します。


はじめに

少子高齢化による労働力の減少と、公的年金の受給開始年齢が段階的に伸びていることに加え元気で就労意欲の高い高齢者の増加などから、高齢者の雇用や就業機会の確保の重要性が認められてきました。こうした背景から高齢者の雇用について様々なルールが高年齢者雇用安定法で定められています。


高齢者雇用に関するルール

1.高年齢者雇用に関する届出(義務)

①企業は、毎年6月1日現在の高齢者の雇用に関する状況「高年齢者雇用状況等報告」をハローワークに報告する必要があります。この届出は高年齢者雇用安定法で定められた義務の実施状況を把握するためのもので、集計結果は厚生労働省から公表されています。

②企業は、1か月以内の期間に45歳以上70歳未満の従業員のうち5人以上を解雇等により離職させる場合は、事前に「多数離職届」をハローワークに提出する必要があります。


2.65歳までの雇用機会の確保(義務)

①企業が従業員の定年を定める場合は、60歳以上とする必要があります。

②企業が定年年齢を60歳以上65歳未満に定めている場合は、「65歳までの定年の引上げ」、「65歳までの継続雇用制度の導入」、「定年の廃止」のいずれかの措置を実施する必要があります。

65歳までの継続雇用制度とは、雇用している従業員が希望すれば定年後も引き続いて雇用する再雇用制度などの制度をいいます。


3.70歳までの就業機会の確保(努力義務)

令和3年4月1日の高年齢者雇用安定法の改正により、定年年齢を65歳以上70歳未満に定めている事業主又は、継続雇用制度を導入している事業主は次のいずれかの措置を講ずる努力義務が課されました。

①70歳まで定年年齢を引き上げ

②70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入

➂定年制を廃止

④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

ア 事業主が自ら実施する社会貢献事業

イ 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

*④、⑤を総称して創業支援等措置といいますが、創業支援等措置の導入には過半数組合・過半数代表者の同意が必要です。


4.中高年齢離職者に対する再就職の援助(①は努力義務、②は義務)

①企業は、解雇等によって離職させる予定の45歳以上70歳未満の従業員が希望した場合は、再就職の援助に関し必要な措置を実施するよう努めなければなりません。こちらは義務ではなく努力義務となっています。

②企業は、解雇等によって離職させる予定の45歳以上70歳未満の従業員が希望した場合は、「求職活動支援書」を作成し、従業員本人に交付しなければなりません。求職活動支援書には、在職中のなるべく早い時期から高齢者等が主体的に求職活動を行えるよう、高齢者等の職務経歴や職業能力に関する事項を記載します。


継続雇用制度とは

厚生労働省が公表した令和4年高年齢者雇用状況等報告によれば、「2.65歳までの雇用機会の確保措置」は99.9%の企業が実施済みですが、そのうち「65歳までの継続雇用制度の導入」を選択して実施している企業は全企業中70.6%にのぼります。

また、「70歳までの就業機会の確保措置」については義務ではなく努力義務ではありますが、27.9%の企業で実施済みであり、その中でも「②70歳までの継続雇用制度の導入」を行っている企業が多くなっています。

これらのことから、継続雇用制度は多くの企業が取り組みやすい高齢者の雇用確保措置であるといえます。


継続雇用制度は、原則として希望者全員を対象とするものにしなければなりませんが、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことなど、就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合には継続雇用しないことができます。ただし、継続雇用しないことに、客観的・合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められますので留意が必要です。


継続雇用制度による再雇用の労働条件については、雇用する高年齢者が希望すれば定年後も65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、最低賃金等の労基法の範囲内で、いわゆる嘱託やパートとして従来と労働時間や賃金、待遇などに関して企業と労働者の間で決めることができます。

有期雇用契約として1年ごとに雇用契約を更新する場合、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当ではないと考えられます。ただし、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められています。


継続される有期雇用労働者の無期転換申込権

上記のように多くの企業で導入されている継続雇用制度ですが、定年後に有期雇用契約として高齢者を再雇用する際の注意点があります。労働契約法により、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みがあった場合、期間の定めのない労働契約つまり無期労働契約に転換できる「無期転換申込権」が発生します。有期雇用労働者が企業に対して無期転換の申込みをした場合、企業は断ることはできず、無期労働契約が成立します。つまり、定年後の再雇用として有期雇用契約の更新を繰り返すと定年の定めのない無期雇用契約に転換する可能性がでてくるということです。ただし、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者と、定年後継続雇用される有期雇用労働者については、一定の条件と手続きを経た場合、「無期転換申込権」が発生しない特例があります。


継続雇用の高齢者の特例

継続雇用の高齢者に対しこの特例が適用されるためには、有期雇用特別措置法に基づく手続きが必要になります。

企業が適切な雇用管理に関する計画(「第二種計画・認定変更申請書」)を作成し、都道府県労働局長の認定をうけた場合は、継続雇用の高齢者については、定年後同一事業主に引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。

この認定を受けるためには、適切な雇用管理に関する措置として以下のいずれかの措置を就業規則や雇用契約書に明記した上で1つ以上実施する必要があります。

・高年齢者雇用等推進者の選任

・職業訓練の実施

・作業施設・方法の改善

・健康管理、安全衛生の配慮

・職域の拡大

・職業能力を評価する仕組み、資格制度、専門測制度等の整備

・勤務等の要素を重視する賃金制度の整備

・勤務時間制度の弾力化

一つ目の「高年齢者雇用等推進者の選任」は他の項目と比較して取り組みやすく、こちらを選択頂いている企業様が多いと考えます。


定年後に同一の事業主に継続雇用され、その後引き続いて同一の事業主(特殊関係事業主いわゆるグループ会社含む)に雇用される場合は特例の対象となりますが、定年後に同一の事業主やグループ会社ではない企業に再就職した場合は特例の対象とならず、通常どおり無期転換ルールが適用されます。

なお、事業主が認定を受ける以前より、同一事業主に定年後引き続き雇用されている方も特例の対象となりますが、対象労働者が既に無期転換申込権を行使している場合は特例の対象とはなりませんので注意が必要です。


終わりに

安定的な人材確保に向け、今後多くの企業において一層シニア人材の活用が重要になると考えています。高齢者の雇用を適法に進めるためには、上述したような必要な措置や注意点が多くあります。


今現在高年齢の従業員がいないという企業様であっても、継続雇用制度における無期転換権発生の特例を受けるためには、事前に雇用管理措置の実施や就業規則の整備が必要です。特例申請については、認定が下りるまでに一定審査の時間がかかりますので、各社様においてはお早目に検討と準備を進めて頂くことをお勧めします。



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