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発達障害の特性を持つ社員への職場における配慮のポイントを社会保険労務士が解説します!

はじめに

企業に義務付けられている障害者の法定雇用率が令和6年から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げされることが正式決定しました。


民間企業で働く障害者数は19年連続で過去最高を更新しており、年々増加しています。また、障害者雇用促進法では平成28年度から企業に対して、過重な負担とならない範囲で、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方」が申し出た場合には企業に対して「合理的配慮」を行うことを義務づけていることをご存じでしょうか。


このように企業は安全配慮義務とともに、障害の特性に応じて職場環境を整備していくことが求められているといえます。


今回は昨今企業の人事労務担当者からもご質問が多い「発達障害の特性を持つ従業員の方への職場における配慮のポイント」について解説します。(なお医学的な部分については下記の参考文献記載の厚生労働省等の資料を参考に執筆しています。)


 

発達障害とは

発達障害と一口に言ってもその種類は幅広く、自閉症スペクトラム症(広汎性発達障害)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害、チック症、吃音など、脳機能の発達に関係する様々な障害が含まれます。また、それらの異なる障害の特徴を複合的に持っている場合もあります。

発達障害のある方は生まれつきの脳機能の発達の偏りにより行動や態度に様々な特性が現れますが、これらは本人のやる気や努力不足、両親の育て方など後天的なものに起因するものではなく、生まれながらの脳の働き方の違いによります。


特性は子どもの頃から現れますが、本人も周囲も発達障害と気づかずに過ごし、その後の進学や就職等で社会に出たときに複雑な人間関係や様々な立場の人とコミュニケーションをとるなどの社会性を要求されたときに発達障害の特性が浮かび上がった結果、人間関係や仕事で躓いてしまい、そこで初めて発達障害と気づくことも多いようです。



発達障害を持つ方の特性とは

代表的な発達障害である「自閉症スペクトラム症」、「注意欠如・多動性障害(ADHD)」、「学習障害」の障害特性について述べていきます。


1. 自閉症スペクトラム症(広汎性発達障害)の特性

「コミュニケーションの難しさ」、「社会性の難しさ」、「興味関心の限定とこだわり」の3つが判断基準になるとされていますが、人により程度に大きな差があります。特性を活かした就労上のメリットとしては「正確さ」「集中力維持」「真面目さと熱心さ」などが挙げられ、特に仕事の繰り返しによる技術の向上は特筆すべきものがあると言われています。


2. 注意欠如・多動性障害(ADHD)の特性

「注意の持続の難しさ」「動きが多い」「衝動傾向がみられる」などが判断基準とされています。大人になってからこれらの傾向が軽くなる場合も多く見られ、機動性を発揮して自ら動く職種において特に能力が発揮されると考えられています。


3. 学習障害の特性

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の学習のみに困難が認められる状態をいいます。得意な部分を積極的に使って情報を理解し、表現できるようにする(ICTを活用する際は文字を大きく行間を空けるなど、読みやすい工夫をする)ことや苦手な部分について課題の量・質を加減することにより能力を発揮しやすくなると考えられています。



発達障害の特性を持つ人が抱える職場での困難

発達障害の特性を持つ人の特性の現れ方は多様でひとくくりに述べることができませんが、比較的多くの人に見られるものとして以下があげられています。


・先を見通して逆算しながら優先順位をつけるのが苦手

・同時に複数の作業を進められない

・自分の仕事のやり方にこだわる

・急な予定の変更にスムーズに対応できない

・暗黙の了解が理解できない

・誤字脱字などのケアレスミスが多い

・感覚が過敏であるため疲れやすく、集中力が続かない



発達障害の特性を持つ社員への企業としての対応

上記のような困難は一見すると単に本人の努力不足では?と感じられたり、周囲が戸惑い疲弊したりすることも多いと考えられます。発達障害の特性を持つ従業員も周囲も気持ちよく働くためにどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。


(1)発達障害の診断にこだわらずに困りごとに寄り添う

弊社でも昨今「もしかして発達障害なのでは」という社員への対応についてご相談をいただくケースが増えています。

ご本人から発達障害であるといった告知がない段階では、まずは先入観や誤った知識で発達障害であると決めつけることのないように、対応することが肝要と考えています。

障害と決めつけて対応すること自体がパワーハラスメント等に該当する恐れもあります。


当該社員の方が例えば上記のような特性が表れている場合には、面談等でまずはどんなところに困難があるのか、なにが業務上支障となっているのか・・・等を個別の面談でヒアリングを行い、対応を考えていく必要があります。そのうえで個別に実は発達障害の診断を受けているといった告知があれば、あらためてその特性に応じて(2)以降の対応をとることになろうかと考えます。特に告知がない場合、会社がいきなり一方的に「障害だと思うから病院にいってきて」といった対応は極めて不適切です。まずは個別の困りごとや業務の支障になっていることに寄り添い、(2)の業務プロセスの見直しを含め面談等を重ねていき、本人との信頼関係を構築しつつ、ご本人と相談の上、会社が押し付ける形ではなく、ご本人同意の上で会社の産業医への受診等からまずは促してみるといったことが現実的です。



(2)苦手なことと得意なことを理解したうえで仕事を与える

発達障害の特性が表れている従業員と業務内容のミスマッチが発生していないかは確認をしましょう。企業の規模等によってどの程度業務配置の変更ができるかについては変わってきますが、例えば対人コミュニケーションが苦手で、一人でコツコツとできるような仕事が得意であれば、営業や接客、電話対応などの業務から外し、データ入力やルーティンワークを任せるなど、業務の配置を見直すことも一案です。


また、指示の系統についてもなるべく複数の上司から異なる指示が下りてくることないようにといった指示系統の見直しや、指示の仕方もあいまいな表現は避けて、具体的に、一つずつ、文字情報だけでなく視覚化するなど、理解しやすいシンプルな手法がよいと考えられています。


(3)周囲への理解の促し方

職場において円滑な対応のためには、本人の持っている特性や指導上の配慮事項等は、周囲の同僚や上長に正しく理解してもらうことが必要です。 しかし、実際に発達障害として医療機関の診断を受けている場合でもご本人が障害のことを伏せて就労している場合もあります。そのためなにか発達障害の特性が表れている結果、業務がスムーズにいっていない場合であっても、周囲も事情がよく理解できず、単なる怠慢なのではと受け止められるケースも多く、周囲との不調和が生じるケースもあります。


本人の意思や気持ちを確認し、それを十分尊重したうえで判断すること大前提であり、本人の知らないところで「発達障害らしいよ」といった情報だけが独り歩きしてしまうことは望ましくありません。


そのため実務上少なくとも、直接仕事のやりとりをする同僚や、直属の上長には、障害特性を正しく理解してもらい、特性に応じた適切な配慮や対応がなされたほうがベターです。

事実上障害者雇用促進法上の合理的配慮を行うためには、同僚・上長の協力は欠かせないからです。


なお、職場において直接のやりとりを行う立場にない他の同僚についても、「なぜあの人だけ特別な配慮をしているのか」といった戸惑いや誤解を与えることはありえるため、必要な範囲できちんと説明できるようにしておくことも求められれます。これも事前にご本人にどこまで開示するかについて慎重に協議し進める必要があります。


 

終わりに

発達障害のある方の特性は一人一人違っており、どんな配慮が必要かはケースバイケースで変わってくると考えています。

従業員とよく話し合い、職場の状況も踏まえてどのような雇用管理が適切なのかを検討していくことが肝要と考えています。

発達障害の有無にかかわらず、本人の特性を活かした業務配置であったり、業務をシンプルにしたりといった構造化については、障害のない一般の社員にとっても働きやすい環境につながると考えています。発達障害の方への合理的配慮を模索することは、職場全体の環境改善にもつながるかもしれません。

センシティブな問題ではありますが、障害者の雇用は日本企業全体の課題といえ、社会全体で取り組む必要があると考えています。






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