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執筆者の写真Gustavo Dore

これから始める人のためのクラウドサービスとの付き合い方

私は仕事柄、経理や総務、事務など様々な呼び方で呼ばれているバックオフィス(BO)で働く人たちとお話をする機会が多いのですが、その中で最近感じることが、バックオフィスで働く人のIT活用の度合いが企業の生産性を左右するということ。この話自体は昔から言われていることですが、クラウドサービスの台頭によってその差はますます大きくなっていると感じています。

都市部のスタートアップで働くバックオフィスの方は、昨今クラウドサービスを活用した業務フロー構築が中心となっています。かつては高額なシステムを購入しなければならず、バージョンアップの都度支出が必要であったものが、現在は月額利用料を払うことで最新版のシステムを利用することができます。これはシステム投資に多くの資金を出せない起業家にとって強い味方になっています。

クラウドサービス間の連携も進んでいて、請求書発行ソフト、会計ソフト、給料計算ソフト、労務管理ソフト、チャットツールなど特別な知識がなくてもデータ連携が可能です。

たとえば、買い物に出かけた先のお店で、iPadのようなタブレットを活用したレジを目にする機会も多いと思います。かつては①レジ締めをして②その日の売上を会計ソフトに仕訳入力する、というような作業が当たり前でしたが、現在では毎日の売上をクラウド会計に自動的にデータ送信することもできます。

バックオフィス業務に関わらず、仕事において定期的な繰り返し処理は付き物。

1日たった5分の処理でも、毎日繰り返せば1年間に5分×365日=1825分で30時間かけていることになります。もしこの作業を自動化することができれば、8時間労働で3日~4日分相当の労働時間を削減することができ、他のもっと価値を生み出す仕事に時間をかけることができます。また、時間の問題だけではなく、人ではなくてもできる作業を手放すことは働く人のストレスを軽減することにもつながりますよね。

かつては、「間違いなく正確に作業をする能力」が求められる時代もありました。しかしながら、今バックオフィスで働く人達に求められているのは、「間違いなく正確にデータが流れる仕組みを構築する能力」です。

経理は、数字を正確に転記をすることが仕事ではありません。データを円滑に流し、その数字を経営陣の意思決定に役立てることが仕事です。そのために、できるだけ不必要な作業をなくすための仕組みの構築が必要です。

そのような業務構築の考え方が当たり前になりつつありますが、残念ながら、地方の中小企業におけるバックオフィス業務では、まだまだ手書きや転記が事務仕事の中心であることが多いという現実があります。

その原因は経営者、バックオフィスで働く人の両方にあります。

経営者の理解がない

残念ながらこの理由が一番大きいのではないでしょうか。企業の成長段階によっては売上に繋がらない管理部門にコストをかけられないということは分かります。しかしながら、まだまだITに対する投資を消耗品の購入と同じように捉えている経営者も多い。

「それで人件費はいくら削減できるの?」

ITに対する投資は「人への投資」をカットするためのものではありません。ITは、人手不足の時代にますます重要になる「人への投資」を何倍にも活かす道具です。まさしく生産性をあげるための鍵です。生産現場の機械には投資するものの、管理部門に対しては投資しない企業も多いように感じています。

バックオフィスで働く人の理解がない

経営者がITへの投資をしてこなかったことに起因することもあるのですが、新しいシステムの導入に対し否定的な感情を抱くバックオフィスの方もやはり数多くいます。

「楽になるなら導入したいです!でもこの場合はどうするんですか?」

「うちは特殊なやり方をしているので、パッケージソフトでは対応できなくて。」

クラウドサービスを導入しようとすると、どこの現場でも起きるこの言葉。みなさんも口にしていませんか?

多くの会社がクラウドサービスを活用しているのに、あなたの会社だけにしか存在しない業務フロー。そもそも特殊なやり方が発生していることがおかしいのではないのでしょうか。

業務フローの再構築に目を向けず、「御社の業務に合わせたシステムを開発します」というシステム会社の一見優しい言葉から、これまではオーダーメイドのシステム開発などで対応してきました。その結果、非効率な業務フローがそのまま残り、多くの企業の生産性の向上を妨げることになっています。

また「自社の業務に合わせたシステム開発」の結果、自社でしか通用しないシステムを扱うスキルが、バックオフィスのキャリアを描き辛くしている現実もあります。企業独自のシステムを扱ってきた人とクラウドサービスを扱ってきた人のどちらが他社でもスキルを活かしやすいでしょうか。

バックオフィスで働く方は、業務に対する責任感が強い方が多い。だからこそ、今のやり方を変えても、きちんとエラーなく業務が回るか不安なのです。大切なのは「その不安がどこからきているのか」ということ。新しいシステムを導入する際には、そこに向き合うことが重要です。

普段ITの導入について話す機会が多いので、「やっぱりクラウド使わないとダメですよね!」と言ってくださる方がいらっしゃるのですが、それもまた違います。クラウドを導入するだけでもうまくいきませんし、クラウドが現時点でベストかと言われれば業種や組織体制によっては、まだ導入すべきではないこともあります。

どの道具を使うのか。

そのためには、ビジネスを通じて何がしたいのか、誰と一緒にしたいのか、というところから掘り起こしていくべきだと感じています。

だからこそ、チームのことをよく理解しているバックオフィスの方が、外部の人との情報交換を通じて、ITについての理解も深めることが大事なのではないでしょうか。

税理士・中小企業診断士 S0U-MU PROJECT代表

田中 慎

経営者の良きパートナーになりたいと、 税理士資格、 中小企業診断士資格を取得。2019年より 総務やバックオフィスで働 く人達のためのSOU-MUプロジェクトを開始。「SOU-MU NIGHT」など、 起業家とバックオフィスで働く人達が地域で繋がり、支え合う環境づくりを目指している。

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